照明担当に聞く!!
“多摩のヒーロー・土方歳三”を最高にカッコよく!
照明担当/関 康明さん
大河ドラマ『新選組!』に続いて照明を担当する関康明さんは、土方歳三の故郷・八王子の出身。それだけに、新選組、そして土方に対する思いは人一倍強いものがあります。情熱いっぱいに取り組んだ今回の正月時代劇『新選組!! 土方歳三 最期の一日』で、最も力を注いだ部分や、こだわったことなどを聞きました。
—————— 地元の人間にとって土方歳三は、やはり特別な存在だったんですか?
関 僕の通っていた高校の隣は土方歳三のお墓がある石田寺だし、土方の生家も歩いて2,3分のところでしたからね。子どものころから“多摩のヒーロー”として身近な存在だったんです。よくお墓参りにも行きましたが、そこに来訪者が記入するノートがあって、それを見ると熱烈なファンが大勢いることもわかり「すごい人がこのあたりにいたんだな」と、ますます誇らしい思いがしたものです。
—————— 今回は土方歳三の最期を描くドラマですから、いっそう気合いが入ったのでは?
関 そうですね。ドラマの照明というのは伝統的に女優さんに対してはすごく気を遣うところがあり、男性はどちらかと言えば「置いといて」(笑)みたいな傾向が強いんですよ。そんな中で、僕は、今回は土方がカッコよく見えなければ、このドラマは終わりだというふうに思っていたんです。そこで微力ながら、まず土方をカッコよく見せるということを最優先で考えました。照明の角度や強弱をつけることによって、厳しさや優しさ、カッコいい表情など、全編通して土方がすごくカッコよく見えることにこだわったつもりです。
—————— 2つめのこだわりは?
関 美術が五稜郭のすごいセットを作ってきたので、それをしっかりと見せるということにこだわりました。いかに奥行きがあるように見せるか、雰囲気を出せるか、本当に頑張りました。また、吊りのシャンデリアや洋風の家具、たとえば椅子に張られた別珍などの質感がよく見えるようにすることにも相当にこだわりました。結果的に雰囲気のあるきれいな映像になったと思います。
—————— 土方の表情、セット、もう一つは?
関 放送が正月なので、いい気分で見てもらえるということを意識しました。暗くどっしりとしたトーンで作っていくと重厚にはなるのですが、1年に1回、家族や親戚が集まってテレビを見ている時に、それはどうなのかなって。重厚にしたくなるところをちょっと我慢して(笑)、顔の表情とかセットが見えるように、出来るだけ明るくすることを意識しました。その3つが大きな柱ですね。
—————— いくつも要素があり、大変そうですね。
関 たしかに難しいセットなので入念な打ち合わせが必要でしたが、逆にセットの良さに助けられた部分も多いんですよ。ふだん僕はセットっぽく見えるのがいやで頑張るんですね。それがうまい感じに上がってくると「とても渋谷区神南2−2−1(NHKの所在地)で作ったようには見えない」なんてふうに言うんですけど(笑)。そういう意味では、今回のセットは本当に箱館にあるように見える、箱館の空気感がよく出ていたのかなと思います。
—————— ディスカッションドラマとも言われるように、後半は土方歳三、榎本武揚、大鳥圭介の3人が膨大なセリフの応酬をするシーンがほとんどです。そこで工夫されたことは?
関 1日の流れの中で進行するドラマですが、実はシーンのほとんどが夜なんです。朝になるとすぐに終わってしまうので、大きい流れで言うと“夜と朝”という2つの変化しかない。照明的には、ある種、単調になりがちなんですね。芝居も1か所で延々やっています。そうなると、芝居が動かない分、カメラを動かす。カメラが動かない時は役者を動かす。そういうことを監督がいろいろ考えています。言葉の応酬、掛け合いなど、延々とセリフ芝居が続く中、僕はそのテンポというのをとても大事にしたいと思ったんです。
—————— テンポをこわさないような照明ですか?
たとえば照明のことだけに100%、120%こだわったら、長いシーンをカット撮りにしてもらうことも考えられます。それによってより効果的な照明にすることもできる。でも、それは役者さんや、撮影するカメラに制約をかけることになってしまう。それでも、その方法がいいという場合はもちろんあります。ただ、今回は出来るだけ役者さんがセリフをスムースに出しやすいように、感情移入しやすいようにスタジオの流れを作るというところに気を遣ったんです。照明が全面に出過ぎず、むしろ、のびのびと芝居をさせてあげるような雰囲気ということですね。セットをしっかり見せることで重厚な趣のある空気を作りあげ、そこで役者さんが自由に動けるということに力を入れました。
—————— 夜から朝の流れ。その切り替えでポイントになったことは?
関 前夜から3人が延々と話し合い、どんどん気持が高ぶっていくという芝居の後、朝になって土方が1人、部屋に戻るシーンがあります。ここはすごくシンプルだけれど、照明としては雰囲気作りに頑張れたところですね。ずーっと夜で来たところをぱっと朝に変わるという印象的なシーン。カッコよく言えば心情表現となるのかな。でも、それよりも土方が一番カッコよく見えるいいシーンなので、出来るだけセットを見せず、土方だけに目がいくようにするということを意識しました。
—————— 照明が際だつ時と引く時とあるわけですね。
関 映像が仕上がった時、目で見てわかるような照明のメリハリというよりも、番組全体として成功するように、ちょっと引くところとか出るところ。その緩急や、目に見えない部分でのメリハリをつけていったということです。
—————— すべて撮り終わった今、土方に対する思いは?
関 ホッとしたというのが一番かな。僕にとって友だちのように身近な意識をもっていた土方が正月ドラマの題材に選ばれて、自分もそれに携われた。そして、とてもいい作品に仕上がった。本当に素直に嬉しいなという感じがあります。みんなに見ていただいきたいですね。とくに男の子としては(笑)、土方歳三の真っ直ぐな生き方に共感できる部分が多いと思います。皆さんにもその思いを広げていくことが出来たらドラマ冥利に尽きます。それに、近藤勇は調布でしょ。不思議なもので八王子の人間からすると、やっぱり「歳三が日本一」なんてふうにちょっと思ったりするわけですよ。だから、新選組っていうより、土方歳三に焦点を当てられたってことに「どうだ!」みたいに鼻が高いですね(笑)。
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1976年10月31日生まれ B型






